2017 ウィークリンク

ウィークリンク 戸建住宅

山梨県中央市に位置する三世代同居住宅である。施主家族はこの土地に代々住み続けてきたが、施主が幼少の頃に一度この地を離れたため、その後既存の家屋は空き家となっていた。広大な敷地は放置されていたわけではなく、施主家族により手を入れられてきたが、既存家屋は老朽化していたため、今回の建替えとなった。
きっかけは、施主が結婚を機にこの土地に戻ることを決意したためであり、後々両親も暮らすことを考慮して同居住宅が検討された。両親は、敷地に植えた樹木や手を入れてきた庭に思い入れがあり、それらを極力残して、既存家屋が建っていた場所に平屋を建築することを求められた。また、居室は出来るだけ敷地南の庭に面することが要求された。
ここでは、施主寝室ゾーン、リビングゾーン、キッチンダイニングゾーンというように機能空間ごとに大きさの異なる6つの小屋を計画し、これらを東西にひとつなぎに並べる案を採用した。
敷地に対して既存樹木を避けるように各小屋を配置しながら、同時に内部においては、各機能ゾーンどうしが生活に破綻を生じることがないように周到にそれらの配置と接続を検討している。各機能空間は、自立しながらも閉塞感を生じないように、隣り合う小屋どうしが設置する壁面を開放する、つまり開口部とすることを基本ルールとしている。
また、各ゾーンごとに床から1850mmより上部を異なる色で塗り分けている。こうすることで、内部空間とその気積は、柔らかく東西に流動的につながる。同時に生活行為は、各ゾーンごとに自立し、プライバシーの確保にもなるという具合である。
この計画は、構造的なプログラムを用いて、極めてロジカルにプランを処理することを意図している。作品名の「ウィークリンク」は、弱いつながりを意味する。生活様式が異なり、趣味趣向も異なる世代間の差異を「家族」という枠で強固につなげてしまうのではなく、世代や個人が自由を規範化した上で、緩やかに関係を保つことは可能であるか。そうした関係性を建築的な機能空間の操作において実現することを試みている。 家型と色彩については、計画初期段階で施主がフィン・ユールの自邸のイメージを持たれていたことをそのまま採用した。また、施主が幼少期に既存家屋の2階から臨むことの出来た富士山をまた見たいということから、物見台を設置している。

所在地 / 山梨県中央市
主要用途 / 専用住宅
構造 / 木造
構造設計 / 桑子建築設計事務所 桑子亮
施工 / 丸正渡邊工務所 角田達哉
写真 / Smart Running 小泉一斉